伊藤元重:地球気候変動への対応はどこへ行ったのか

伊藤元重:地球気候変動への対応はどこへ行ったのか


 今年の8月は異常気象だったようだ。「だったようだ」と書いたのは、私自身がこの夏は海外にいたので実感したわけではないからだ。ただ、広島で起きたような大災害は、これまでの気候条件では考えにくいことだ。帰国後、東京都内を車で移動中にゲリラ豪雨に遭遇した。車のワイパーが効かないような集中豪雨で、まさしく異常気象である。台風の被害も年々大きくなるような気がする。それだけ台風の規模も大きくなっているのだろう。

■いま世界で起きているのは「地球気象異常化」
 経済関連で言えば、この夏の異常気象で消費が大変な打撃を受けたようだ。消費税率を引き上げたことが景気の足を引っ張っているように言う人がいるが、長雨と冷夏によって消費が振るわなかった影響の方がもっと大きいと言う人も多い。ある流通関係者が心配していたが、いま小売業の倉庫には夏に売り損なった商品が大量の在庫として積まれている。そうした商品がこれから大幅な値引きで出てくるだろうから、それがまた景気の足を引っ張るかもしれない、と。

 都内を騒がせているデング熱が異常気象と関係があるかどうか分からない。ただ、地球温暖化が進めば、日本のような温帯地帯でもマラリアのような病気が広がる可能性がある、と気候変動の専門家から聞いたことがある。デング熱が突然騒ぎになっているのも似たような話かもしれない。
 米国のジャーナリストのトーマス・フリードマンが言っていたが、いま世界で起きていることは「地球温暖化(global warming)」というよりは、「地球気象異常化(global weirding)」というのが適切だろう。地球全体が温暖化して海水面が上がるだけでなく、強力な台風が発生しやすくなり、気候の変動が激しくなり、そして農業や病虫害など生態系を変える様々な変化が起きるのだ。




■スターン・レビューが警告する気候変動の経済コスト
 こうした気候変動の経済コストはどれくらいの規模になるのだろうか。大災害による被害の社会的コストを測ることは難しい。冷夏によって日本の小売業が被る被害の額を計測することも簡単ではない。ただ、いずれも相当に大きな社会的コストであると言ってよいだろう。
 英国の経済学者のニコラス・スターン教授が中心になってまとめたスターン・レビュー「気候変動の経済学」というものがある。気候変動の専門家にはよく読まれているリポートである。そこには、今のペースで地球温暖化が進んでいったら、世界全体でどれだけの経済コストを負担しなくてはいけないのか、その計測結果が報告されている。

 その数値の詳細についてここで触れる準備はないが、要するに大変な規模の損失を人類は被るという結果である。海水面の上昇によって失われる土地、災害の拡大による被害、食糧生産への影響など、様々な費用を計算し集計している。
 スターン・レビューの主張は、こうした膨大なコストを人類は負担すべきではない、それを避けるために、できるだけ早く温暖化対策のために二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出抑制を強化すべき、というものだ。温室効果ガスの排出抑制はコストがかかるが、そのコストの方が気候変動のもたらす被害よりはるかに小さいというのだ。

■忘れられてしまった温暖化対策?
 日本の温室効果ガス排出抑制は進んでいるのだろうか。産業界は省エネを進めている。自動車などでも、ハイブリッドカーなどの普及が進み、さらには温室効果ガスを排出しない燃料電池車も販売されようとしている。産業界はそれなりの努力を続けているといってよいだろう。
 ただ、以前から多くの人によって指摘されているように、産業界に比べて一般国民の対応は進んでいない。日々の生活を営む中で温室効果ガス排出抑制について真剣に考えている人がどれだけいるだろうか。データで見るかぎり、消費者の方にはまだ温室効果ガス排出抑制をする余地が多くありそうだ。
 それに加えて原発問題がある。原子力発電所は温室効果ガスを排出しない。原発を利用していくことが日本の温室効果ガス排出抑制政策の中に組み込まれていた。しかし福島原発の事故以来、日本の原発はすべて停止している状態だ。原発の再稼働には賛否いろいろな議論があるだろうし、ここでそれを正面から取り上げたいわけではない。
 ただ、原発が停止している中で火力発電所がフル稼働状態にあり、それが大量のCO2を排出していることも事実である。電力を確保するため古くなった設備を無理に動かしているので、CO2排出抑制の効率は非常に悪い。

■一般国民も温暖化対策に取り組む必要がある
 当面の危機を乗り越えるため、日本は温室効果ガス排出抑制で大きく後退してしまった。原発事故などやむを得ない面はあるとは言っても、いまの状況をいつまでも続けるわけにはいかない。もちろん、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの利用を拡大することで温室効果ガス排出抑制を進めて行くべきであるが、再生可能エネルギーの利用はそんなに簡単に拡大するというものでもない。
 世界の流れ見ると、欧州は温暖化対策に非常に熱心だ。再生可能エネルギーの利用も進んでいる。米国の立場は微妙であるが、民主党政権は温暖化対策に熱心である。中国に代表される新興国は先進国中心に進められる温暖化対策の枠組みには抵抗を示しつつ、国内では少しずつ温暖化対策への対応を強化しつつある。こうした流れの中で、グローバルな温暖化対策の枠組みについての合意がなかなか形成できないという状況にある。
 ただ、冒頭でも述べたように地球気候変動は確実に進みつつあるようだ。そしてより多くの人がその問題の深刻さを認識するようになっている。こうした動きが地球変動への対策の合意を後押しすることになるかもしれない。そうした中で日本がどういった姿勢を示すのかが問われることになる。
 原発停止という異常事態なので温室効果ガスの排出が増えるのはやむをえない、という異常事態の論理がいつまでも通用するはずはない。原発を再稼働するかどうかの議論は別としても、日本でも温室効果ガス排出抑制の取り組みを強化することが求められる。そのためには、産業界のみならず一般国民も温室効果ガス排出抑制により真剣に取り組む必要がある。

■炭素税で省エネが進み、再生エネルギーへのシフトも
 温室効果ガス排出抑制の政策手法についてここで詳しくは論じないが、具体的なイメージを持つためには炭素税を考えるのが有益であると思われる。経済学的には、生産者も消費者も含めてすべての国民が温室効果ガス排出抑制のインセンティブを持つためには、炭素燃料を利用することの社会的費用を価格に埋め込むことが有効であると考えられる。
 石油や天然ガスなどすべての炭素燃料に炭素税という税が課されれば、ガソリンであろうと電力であろうと、炭素燃料を利用する費用は高くなる。それだけ抑制誘因が働く。ようするに省エネが進むはずである。また炭素燃料の取得コストが炭素税で上がれば、それだけ再生可能エネルギーへのシフトも加速化するはずである。
 炭素税は劇薬である。それによって多くの生産者が影響を受けるだろうし、景気にも大きな影響が及ぶ可能性がある。そこまでのコストをかけて炭素税を導入するのかということになるが、それは気候変動の社会コストとの比較の問題である。どちらのコストの方が大きいのかが問われる。
 スターン・レビューの主張は、炭素税導入などの温室効果ガス排出抑制のコストの方が、地球気候変動の社会的コストよりもはるかに小さいので、一刻も早くより強力な温暖化対策をすべきである、というものだ。

■温室効果ガス対策は強化する方向に行かざるをえない
 ここで炭素税の導入の是非を論じるつもりはない。そのためには、より詳細な制度の議論をしなくてはいけないからだ。
 ただ、中長期の展望ということで言えば、温室効果ガス対策は確実に強化する方向に動かざるをえない。その手法が炭素税であるかどうかは別として、温室効果ガスの排出抑制には生産者も消費者もそれなりに負担が求められる。
 こうした前提で将来の社会の姿を描くという作業が必要となってくる。都市の姿、交通体系、産業構造、国民生活など、すべてのものが温室効果ガス対策によって大きな影響を受けるはずであるからだ。
2014年9月18日(木)11時36分配信 nikkei BPnet


地球温暖化、平均気温4℃上昇で生物種の40%が絶滅!?

ニホンウナギの絶滅危惧種指定が話題になっているが、絶滅しそうなのはウナギだけではない。実は1年に4万種という、恐竜絶滅期以上の超スピードで“種の絶滅”が進んでいることが判明。人類は、史上最悪の“第6の大絶滅期”真っただ中にいたのだった!

◆平均気温4℃上昇で生物種の40%が絶滅!?【気候変動】
 気候変動も、生態系に大きな影響を与えている。世界自然保護基金ジャパンの気候変動・エネルギー担当、山岸尚之氏は「よく言われるホッキョクグマだけでなく、温暖化で多くの生物が絶滅の危機にさらされる可能性がある」と危惧する。
「気温の変化に対して、高山や島などの限られた地域に住む生き物、開発で生息域が分断されている生き物、植物などは逃げる場所がありません。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告では、温暖化対策を何もしなかった場合、樹木や草木をはじめ、リスなどのげっ歯類、ゴリラなどの霊長目までが温暖化のスピードについていけなくなると予測されています。日本でも、昨年の環境省報告によると、クマゲラなどの希少な鳥類、カモシカ、ツキノワグマなどが生息するブナ林が2℃上昇で39%減少、3℃以上で68%減少すると危惧されているのです」

 山岸氏は「CO2濃度の上昇が海水の酸性化を招き、海の生物にも致命的な影響を与える」という。
「海水の酸性化が進むと、サンゴや貝類、カニやエビなどの甲殻類が殻をつくれなくなります。IPCCの最新の知見では、温暖化対策を何もしなかった場合には甲殻類の2割以上、軟体動物や暖水サンゴの約5割の種が影響を受けるとされています」

 温暖化による海面上昇も、大きなリスクとなる。
「亜熱帯・熱帯地域の海岸沿いの浅瀬に生い茂るマングローブ林は、多くの小魚が育つ『海の揺りかご』ですが、海面上昇で消失する恐れがあります。ウミガメが産卵場所とする砂浜もなくなります」(山岸氏)
 IPCCは「平均気温が4℃上昇すると、全生物の40%以上の種が絶滅する」と警告している。
 温暖化は人類にも大変な脅威だ。IPCCは、このままでは30億人以上が水不足に、洪水被害が毎年1500万人、食糧危機や貧困も深刻化すると警告している。
取材・文/志葉玲 北村土龍 写真/Chip Stop 熱帯森林保護団体 トラ・ゾウ保護基金 宇根有美 熱帯林行動ネットワーク getty images
2014年08月21日 09時00分 日刊SPA!― 人類は[絶滅期]を迎えていた!【7】 ―

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by love_kankoku | 2014-09-23 13:12 | 政治・経済(1341)